ふくい総合法律事務所 所長ブログ

このブログは、福井県福井市にある法律事務所の所長弁護士である小前田が日々の業務や勉強の中で得た知識や経験をシェアするためのものです。

法律事務所に必要なオフィスの坪数は減っている

僕が開業した10年くらい前は法律事務所に必要な坪数は

『弁護士の人数×5坪+10坪』といわれていました。

この考え方によると弁護士1名で開業しようと思うと、15坪(約50㎡)以上の物件を探すことになります。弁護士が増えるにしたがって、必要な坪数はここから増えていきます。

 

紙資料をベースにしたり、事務スタッフを雇用したりする従来の法律事務所の仕事のやり方を前提とすると、上記の坪数は広くはなく、結構ギリギリの広さなのかと実感として思います。

 

ただし、最近は自宅でデスクワークやWEB会議などをしていると、そもそも法律事務所にオフィスが必要なのかということについては考える機会も多いです。

 

正直、今、自分が開業の相談されたとしたなら、人によってはこれだけの坪数はいらないのではないかと思います。

 

 

理由はしては以下のとおりになります。

 

1.固定費は極小化すべきであること

基本的に経営は

「売上-経費=利益」

となります。

 

そのため、経営をうまくやっていこうと思うと

①売上を上げる

②経費を下げる

という方法しかないです。

 

もちろん売上を上げるのも大事ですが、確実なのは経費を下げる方法です。

 

家計においてもそうですが、固定費(賃料や通信費等の毎月必ず出ていく経費)の支出というのは一度決まってしまうとそこから下げるということはなかなかできないです。

そのかわり、一度、固定費の金額を下げきってしまえば、そのあと努力しなくても毎月の経費を抑えることができます。

 

そのため、経営においては、固定費を極小化していくことが大事になります。

 

2.賃料は坪数×坪単価で決まる

固定費の中でも大きな割合をしめるのがオフィスの賃料になります。

 

オフィスの賃料は

「坪数×坪単価」

で決まります。

 

 

そのため、坪数の小さい、つまりできるだけ狭いオフィスを探したほうが賃料は下げることができます。

 

 

また、坪単価は、都会か地方か、あとは立地やビルのグレード等で決まります。

 

福井では裁判所付近のオフィスの坪単価は5000円~1万円くらいです。

東京の丸ノ内にオフィスを構える弁護士に話を聞くと、その事務所の坪単価はうちの事務所の10倍くらいするらしいです。

 東京と地方では坪単価が大きく異なります。

 

ともかく、売上が少ないうちは、できるだけ坪単価が安いオフィスを借りるべきです。

きれいでグレードの高いビルに事務所を構えたからといって、顧客が増えるわけではなく、売上が伸びるわけではありません。

 

 

3.書類や本も電子的に保管ができること

いまの多くの法律事務所は紙資料をベースに仕事をしています。これは、裁判所への書面提出が紙での提出が原則になっているからだと思います。

終わった事件の記録の保管も必要となります。

本に関しても、大量に保管が必要になります。

 

そのため、本棚やキャビネットがたくさん必要というのがこれまでの法律事務所です。

 

しかし、

裁判所もマイクロソフト社のTeamsを使って、民事訴訟手続を出来るように進めていこうとしています。

従来の紙資料を前提とする民事裁判ではなく、電子保管が前提となることに移っていくのは間違いないと思います。

そのため、今、開業するのであれば、紙資料を前提とせず、電子保管を前提に記録の管理をしていくべきだと思います。

 

 

また、書籍に関しても

法律専門書や官公庁等の各種資料を横断的に検索閲覧できるサービス

も出てきており、今後、購入が必要な書籍は減っていくと考えられます。

 

リーガルライブラリー

https://legal-library.jp/

 

そのため、書類や本も電子的に保管ができるようになっていくことを前提とすれば、本棚やキャビネットのために、広いオフィスを借りる必要はなくなってくるといえます。

 

4.事務スタッフや会議室も必要不可欠とはいえないこと

ここは考え方は分かれると思いますが、事務所で扱う事件の種類に応じては、事務スタッフも必要ないといえる弁護士は増えると思います。

 

今は、電話代行のサービスもあるので、事務所にかかってきた電話も事務スタッフでなくても電話に対応することができます。

事務所の経理などについても、会計事務所などに記帳代行を頼むこともできます。

クラウドソーシングなどで、事務作業についても外注できる場合もあります。

必ずしも、事務スタッフでないとお願いできない仕事というのは減ってきていると思います。

 

うちの事務所の場合は、①取り扱っている事件の種類、②弁護士は弁護士しか出来ない仕事に注力していくべき、③よりよい顧客サービスのためには事務スタッフが必要、との理由で事務スタッフを採用しています。

 

ただし、今後、開業する場合は、自分の事務所が事務スタッフを必要とする事務所なのかどうかということはしっかり考えたほうがよいと思います。

 

事務スタッフを雇わないということであれば、必要なオフィスの坪数も減ります。

もちろん、事務スタッフの給与という固定費も削減できます。

 

あと会議室についても必要かは考えたほうがよいかと思います。

これだけWEB会議が浸透してくると、事務所に会議室も必要なくなるという時代は来るかもしれないですね。

会議室も不要になれば、かなりオフィスの坪数は削れます。ここまでいくともはやオフィスすらいらないという話になりそうです。

 

ここは、弁護士の働き方や事件の種類にもよるかと思います。

 

5.まとめ

正直、今、自分が開業の相談されたとしたなら、人によっては従来必要とされたオフィスの坪数はいらないのではないかと思います。

固定費についてはできるだけ極小化すべきであり、これまでの法律事務所の仕事の仕方にとらわれずに、本当に必要なオフィスの坪数を考えていくべきです。